しんしゅう屋の農話

農のお話。野菜の素晴らしさを伝えていきます。

甘さに負けた伝統とうもろこし

日本の懐かしい味

 

ワキシーコーンの一種であるもちトウモロコシは、スイートコーンにはないモチモチした食感が魅力。

 

スイートコーンのように醤油より甘いことはないので、焼きトウモロコシにぴったり。昭和以前のお祭りの屋台などで食べられるトウモロコシもこの品種で再現できる。現在の多くの屋台ではスイートコーンのみを取り扱っているため、この味を味わうことはなかなかできない。


穀物としての香ばしさを醤油が引き立てる昔ながらの焼きトウモロコシは、もちトウモロコシならではである。

 

 

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白もちとうもろこし

 


この魅力あるトウモロコシは、日本で古くから栽培されていたが、現在は各地で小規模な栽培をしているのみである。

 

モチモチしていて、噛めば噛むほどとうもろこしの旨味が出る、知る人ぞ知るとうもろこし。しかし、その美味しさが全国に広まる前に、前代未聞の甘いスイートコーンがブームになり、もちトウモロコシは鳴りを潜めてしまった。


甘くて皮の薄いスイートコーンも良いが、一粒一粒をもぎ、トウモロコシの旨味を噛みしめることができるもちトウモロコシは甘いだけではない良さがある。

 

現在主に栽培されるもちトウモロコシは、白もちトウモロコシ、黄もちトウモロコシ、黒もちトウモロコシで、もち感が強い順に白、黒、黄である。甘さでは、黄、白、黒の順に甘い。

 
この他にも紫もちトウモロコシや茶もちトウモロコシなどがあり、地域によって様々なもちトウモロコシが受け継がれている。

 

 

余談:もちトウモロコシが属するワキシーコーンが中国の雲南地方の発祥であることから、その昔中国からもたらされたものだと考えられる。

 

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 ヒゲが白く、まだ若い/白もちとうもろこし
 
 

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食べ頃になると、ヒゲ(雌蕊)が赤くなる/白もちとうもろこし

 

 

しんしゅう屋のもちトウモロコシの旬は7月〜8月

 

しんしゅう屋では、もち感が強い白もちトウモロコシと、比較的甘い黄もちトウモロコシの二種類を栽培している。

 

 

 

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東京の伝統野菜「ねり」とは

 

 クセのない軽やかな口あたりと、ネバネバした食感がたまらないオクラ。夏の野菜として愛されている野菜の一つである。

オクラの中でも歴史ある八丈オクラは、ただのオクラではない。八丈島で古くから栽培される伝統野菜であり、大きくなっても柔らかいという和オクラならではの魅力がある。

 

 

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八丈オクラの実

 

 

現在日本で使われているオクラという名称は、アメリカで「okra」と呼ばれていることに由来する。その「okra」もまた、ガーナで話されるトウィ語の「nkrama」から来ている。


日本に「オクラ」がやってきたのは明治以前で、「ロング グリイン」と「ドワーフ グリイン」の二種類のオクラがアメリカから渡来しており、それぞれ草丈の高いものと低いものであった。 

 

 

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竹中卓郎『舶来穀菜要覧』(大日本農会三田育種場、1885年)P119

 

食用として全国的に「オクラ」が普及する昭和50年代以前は、「オクラ」は「ねり」と呼ばれ、前述した書物においても、渡来したオクラのことが「あめりかねり」と記されている。

 

昔の「ねり」のほとんどは今でいうところの花オクラで、同じく「草ねり」と呼ばれ、紙漉糊などに用いられていた。食用としての「ねり」は、八丈島や沖縄で栽培され、現在それぞれ「八丈オクラ」、「島オクラ」と呼ばれている。

 

余談:昔の日本人は粘り気があるものを「ねり」と呼び、それが転じて「のり」=「糊」になった可能性がある。

 

 

あまり島外に出回らない和オクラ「八丈オクラ

 

日本の伝統野菜である「八丈オクラ」と「島オクラ」は、断面が丸型で、「丸オクラ」という総称がある。対して海外品種のオクラは星型で、それぞれ丸莢と星型莢と呼ばれている。

 

星型のオクラは大きくなりすぎると固くなるが、「丸オクラ」はその倍になっても柔らかく、大きく食べごたえのあるオクラを楽しむことができる。

 

そんな和オクラの一つ「八丈オクラ」であるが、実のところ島外にはあまり出回っていない。


オクラの楽しみ方は様々だが、オクラを使った八丈島の郷土料理には、オクラの粕漬、オクラのさっと煮などがある。

 

 

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成長途中の八丈オクラ

 

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八丈オクラの花。オクラと同じようにネバネバし、柔らかく口の中でとろける。

 

しんしゅう屋の八丈オクラの旬は、7月〜10月。

 

 

 

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